2013年6月21日金曜日

子宮頚癌ワクチン取り扱いについての当院としてのご説明

2013614日,HPVワクチン(以下、子宮頸癌ワクチン)の「接種の積極的勧奨の差し控え」が報道され、厚生労働省より正式に勧告がなされました。しかし、このような勧告を受けて、実際にどのように対応して良いのかわからない方も多くおられるのではないかと考えます。
ここでは本勧告を受けて、「日本プライマリ・ケア連合学会ワクチンに関するワーキンググループを担当しておられる守屋章成医師のご意見を元に、当院医師内での検討結果を踏まえて、現在の当院としての考えをお示しします。

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【はじめに ~本勧告の持つ意味について~】
■この度、子宮頸癌ワクチンの接種後に「手足の痛みが長期間残ったり、動かしにくくなった」などの重い症状が複数報告されました(日本の現状、300万回以上の接種に対して多く見積もって30数例=10万分の1の確率)。なお、これが本当にワクチンの副作用なのか,別の原因なのにたまたま接種後に偶然重なっただけの症状なのか、現在も調査中で最終的な結論はまだ出ていません。
■この事象を受けて、調査が進むまでの間、国は一時的にこれまでと方針を変え、「積極的に打つことを公式に宣伝することは控える」こととなりました。つまり、この勧告は決して「接種中止勧告」ではありません。自主的に接種を希望される方は「これまでと同様に接種」が出来ます。 

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【初回接種の方・まだ受けておらずに接種を迷っておられる方へ】
本ワクチンが予防するウイルスは,性交渉で感染するものであり、日常生活ではうつりません.思春期が接種タイミングとなっているのは効率よい免疫獲得の観点の他、「性交渉が始まる前に接種すべきだから」ということが主な推奨理由となっています。よって、性交渉がないなら今慌てて接種する必要はありません。国の今後の調査結果をしばらく待つことは十分可能と考えます。
「因果関係調査中で低確率な危険性」よりも「性交渉する前の免疫獲得として今出来ることはしておく」ことを優先するならば、家族や担当医と相談の上、どうぞ接種を受けて下さい.

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【既に1回目ないし2回目を接種済みの方へ】
■今回、国が上記の様な方針をとった訳ですが,既に対象者が1回目ないし2回目を接種済みの場合、このまま次回接種を先延ばしにすると、適正な接種スケジュールから外れてしまい、予定していた十分な免疫をつけることが期待できない状況になります。
免疫を十分付けることを優先するなら,スケジュールどおりのワクチン接種をおすすめします(これまで通り公費対象です)。
一方で「因果関係調査中の、低確率でも存在する危険性は避けたい」ということなら、先延ばしもやむを得ないでしょう(その場合は今後データ上では免疫定着不十分となる可能性をご留意ください).

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【予防のために、これを機に考えたい大切なこと】
今回、ワクチン接種のことが話題となりましたが、むしろ大事なことは,ご家庭内できちんと「性」について話し合いを持つことです.そして、性交渉によって望まない妊娠や重い性病をうつされてしまう危険性について十分お子さんに伝えることこそ本当に大切です.
本ワクチンは「子宮頸癌ワクチン」と呼ばれるものの、実は子宮頸癌を確実に減らす(予防する)効果について、期待はされているものの現段階では十分に証明されてはおりません。
よって、「子宮頸癌予防」という点で考えた場合、「ワクチン接種」よりも「適正年齢より子宮頸癌検診を受け続ける」ということの方が大事なのです(子宮頚癌検診はその有用性が証明されています)。


今回の報道と国からの決定を機に、皆様のご家庭で性についての話し合いから正しく子宮頚癌予防・対策の考え方が広まることを願います。

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